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シュノーケリング4

シュノーケリング4

沖縄での初めてのシュノーケリング、私が30代の頃の話を。

曇天の日、初めて脚ひれをつけて潜った時、とにかく息をするのに必死であった。ライフジャケットを付けているので安心だと青年に言われても、人生、いつ、何が起こるかわからないと思い、緊張のあまり手を握りしめたゲンコツで何度も周りに居る友達の頭を叩きつけたことか・・・。

ぷかぷか海面に浮いている時、ふと顔を上げると遠くに砂浜が見える。

曇天にもかかわらず、デッキチェアに座ったカップルや散歩している人の姿がある。左側にはキャンプ用のテントも見える。それなのに、ふと水面下を見ると、そこにはテーブルサンゴが拡がっている。私は水面に顔をつけたり、あげたりしながら「この両方の世界はいったい何なんだろうか」と呆然としていた。

魚を集めるためにもらったパンは緊張して両手をげんこつ状態にしていたので右手の中で見事に圧縮されていた。

皆はどうしているのかと、ふと見渡すと、それぞれが水面に顔をつけている。

「よしっ」と私は気合をいれて水面に横になった。そしてパンを海中でほぐした途端、海底から、すさまじい数の魚が私めがけて突進してきたのだった。

それはビックリする暇もなかった。銀色、黒、青いの、小さいの、大きいの、それがパンくずめがけて集まってきて、パンを持った私の手に吸い付いてきた。

中で一番強烈だったのは体長が20センチくらい。頭がズングリ丸くて、全体が黄緑色。そこにショッキングピンクの放射状のラインが入っている。何とも凄いデザインの魚であった。顔だちがどことなく浜田幸一に似ていた。

体をぷりぷりと振りながら、パンくずを食べていた。魚と同じ水中にいて、魚たちを見るのは、水族館で大きな水槽を眺めたりするのと全く違う。こんなに生き生きとして、魚が綺麗なものだとは思わなかった。

エサを求めて魚たちは私の周りをぐるぐる泳いでいたが、パンがなくなると同時に私の前から姿を消してしまった。ったく薄情な人間みたいな奴らだ。

つづく