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ヤギさん犬完結編

ヤギさん犬完結編

女子大生達を追っ払ったヤギさん犬を抱きしめて頬ずりしてやりたかった。

犬もにこにこしている私に対して、尻尾くらい振ってくれないかと期待したが、じっと目を閉じたままで、さっき自分がやったことの余韻にひたっているようであった。彼女達は犬に対して何も悪いことはしていなかった。

ただ自分達のおしゃべりに集中していただけである。そんなことはヤギさん犬の前では何度も繰り広げられた光景で別に何も珍しいことでも何でもない。

ある時は学校帰りの小学生が「犬、イヌ」とからかっているのを見た。

おばさん4,5人が「がっはっは」と笑いながら、犬の前を通り過ぎることも多い。しかしヤギさん犬はそういう人を見ても単にちょっと迷惑そうな顔をするだけで、ただ、ひたすら、けだるそうにしていた。ところが、あの女子大生が通りかかった途端、猛然と吠えかかっていった。「こいつら、気にくわない」という何かを感じたから行動に出たはずである。見てくれが派手で精神的にはどこかケモノを感じさせる彼女達に、同じ生き物として相いれないものを感じ取ったのか?若い女性が発散するジュリアナ東京向きのフェロモンが郊外の一般家庭の飼い犬には気にくわなかったのか?

それから私は何とかヤギさん犬と親交を深めようとして愛想をふりまいているのだが、相変わらず、犬は無気力、無感動である。

だから何故あんな事が起こったのか?いまだに謎のままなのだ。

犬がしゃべれたら、この時の心境を是非とも聞いてみたいものだ。