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嘘つきⅡ

嘘つきⅡ

クラスの中で特にぼぅ~っとしてる女の子を捕まえて私の作り話が始まった。

「本当のお父さんはフランス人でパイロットなの。お母さんはデザイナーなんだけれど、私のことを今の家に預けたの。大人になったら迎えにきてくれるらしいよ」

「へぇ」彼女はびっくりしていた。しかしその後、「でもお兄ちゃんと顔がそっくりだよ」と言った。

私は心の中で「ちっ、あいつのおかげで・・・」と舌打ちをした。

私がフランス人と日本人のハーフであるというとき、一番邪魔になるのが兄の存在であった。私のことを無理に納得させても兄のことを聞かれると私はウッっと言葉に詰まった。

「似てるかな」なるべく平静を装ったが「うん」と言われると、どうしようかと汗が出て来た。

「似てるけど本当の兄じゃないんだよ。きっと一緒に住んでるから顔が似てくるんだよ」などとわけのわからぬ理屈で彼女をいいくるめ、フランス人と日本人のハーフになりきろうとしたのである。

彼女は親はどこに住んでいるのか、連絡はあるのかと質問をあびせる。

そのたびに隣町のお屋敷町の住所を言い、クリスマスにはプレゼントを届けてくれるのだと話した。

つづく