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母の病気5

母の病気5

びっくり仰天するスタイルで現れた母を見て、「もったいない」だけでお洒落もせずに、私のお古を着ている母が不憫でならなかった。若い時は何でもいいけれど、ある年齢に達したら、お洒落はしたほうがいいと思う。

この頃は私がああだこうだとうるさく言ったために、髪も短く切ってすっきりしたし、とんでもない恰好もしなくなった。買い物に行くときも連れていって似合うものがあればプレゼントしたりしているのだが「あれが、いい」と指さすので、近寄ってみるとアルマーニやクリツィアのスーツだったりするので、こっちの心臓がドキドキする。

だいたい、試着してみると似合わないので、ほっと胸をなでおろしているのであるが、少しはセンスを磨いてもらおうと年輩の女性向きの雑誌を見せたりすることもある。しかし彼女は服やアクセサリーではなく、モデルの女優の顔を見て、「あらーー、この人若い頃は綺麗だったのに、しわが凄いわねぇー」などと言っている。そんなことよりも、見るべきものは他に沢山あるだろう、と,言いたくなるが全く彼女は気にしていない。

「おねえちゃんが学生の頃に着ていた、薄手のたっぷりしたコートを縫い直したらこういうワンピースが出来るわね」などと、サンローランのワンピースを指さしながら言っている。

リフォームも良い心がけではあるが、センスがない人がやっても無駄だと思う。

しかし私のそういう気持ちも、母の頑固な「勿体ない攻撃」には、どうやったって勝てないのである。

母に勝てない私も、今は我が娘が「要らなかったら捨ててね」っと、どーんと持って来る下着類を見て、「もったいない」を連発し、捨てることなく履いている自分がいるのであった。