「ひじⅡ」
塩をふいて乾燥した梅干しを貼り付けた肘にならないよう「レモンでひじをこする」「軽石で軽くこする」など一応やってみたが、効果があるのかどうかはわからない。
友達は「こういうものはねぇ、毎日毎日、少しづつやっていって効果があるの。すぐ効果は出ない場所なのよ」とクールに言う。
しかしせっかちの私は、すぐ効果がないと嫌になってすぐやめたくなる。
将来にむけての、あてのない努力は嫌なのだ。
タオルでこすっても、レモンでこすっても、軽石でやってみても、ひじの梅干しは中々柔らかくなってくれそうになかった。
動物園にいる象の皮膚のように、妙に頑固なものである。
薄着の季節でも腕の太いのを長袖で隠していたために、私の頭の中からは、ひじの手入れが欠落していた。それでなくても面倒臭いことは大嫌いだから20年以上野放しにされた、ひじの状態がどんなものであるかは想像できると思う。
なにものにもめげない、しっかりした角質に覆われたひじなのだ。
こんな、ひじのままでは来年の夏は外を歩けない。
一年中、七分袖か長袖生活である。
歳をとったら顔だけでなく、ひじまで梅干しになる。「梅干しばばあ」とはよく言ったものだが、あきらかにその一歩を私は踏み出しているのであった。