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食の好み3

食の好み3

初めてチーズたっぷりのピザを中学生の時に食べた時「こんなに美味しいものがあったのか」とうっとりした。

しかし、それも10代、20代をピークに段々、和食の方に嗜好が移っていった。

若い頃は脂っこいものを好んでも、段々とさっぱり系のものが体に馴染んでいくのではないのだろうか?

「俺は子供の時から、和食を食べていて、何か違う感じがしていたんだ。それがある日、ハンバーグとケチャップ味のパスタを食べて目からうろこが落ちたんだよ。おれの求めていたのは、これだったんだ。この味だったんだって。それ以来、ずーっと俺の味覚は変わらない」と彼は威張った。

ブリのあら煮なんか、喜んで食っている奴の方がよっぽど変だぞと言う。

人の味覚は、成長するものなのか?それとも幼い頃から確固たるものがあって、一生、変化しないものなのか?私にはわからない。でも自分の幼い頃の話を聞くと、やはり洋食よりは和食の方が好きだったようなのだ。

親戚が集まると、必ず私の3歳の時の話が出る。

親戚中が叔父の家に集まった時、食事の準備をしていた叔母たちが、台所に料理の置き場所がなくなったので、焼いた肉やソーセージが盛られた大皿と、牡蠣酢となまこ酢が入った大きな丼ふたつを、客間の座卓の上に置いておいた。

台所仕事も一段落して、一同が集まっている部屋に行ってみると、私の姿が見えない。慌てて家中を探してみたら、客間の座卓の前で私が、ぬいぐるみのクマみたいに座っていた。ふと見ると、牡蠣酢と、なまこ酢が入っていた大きな丼が見事に両方とも空になっている。ビックリした母が私を抱き上げると、にたーっと満足そうに笑い、手足をバタバタさせながら、げっぷをし続けていたというのである。

「どうしたんだ、この子は」

親戚中が呆れかえるなか、私は、きゃっきゃっと、大喜びしていたらしい。

つづく