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専業主夫

専業主夫

先日、2度程会ったことのある、30歳になったばかりのIT関連の、仕事がバリバリ出来る男性と話していた。

彼は仕事の話が終わると、急に肩を落として「実は僕、もう仕事をするのが嫌になってしまいました」と言う。「え??会社を辞めるの?」と驚いて聞き返したら、今までプライベートな話は一切しなかったのに、色々と愚痴をこぼし始めた。

男性では彼くらいの年齢から40歳位までが一番、激務を強いられる年齢ではないかと思う。仕事を覚えられない後輩の面倒を見ながら、上からはああだこうだと言われる。

「まだまだ君は若いんだから」などと言われて地方への日帰り出張を言い渡される。難しい仕事をこなすと鼻の先に昇進、出世をちらつかされる・・・こういう環境には疲れてしまったそう。

彼の一番の望みは結婚退職して専業主夫になることらしい。同じ会社の結婚退職する女子社員が羨ましくて仕方がないそうだ。

「女性は結婚が決まると祝福されて退職するのに、男性にはそれがない」と怒っていた。話を聞くと、彼は、ちゃんと部屋も掃除し、自炊もしている。縫物もやるし、自分でアイロンをかけて、いつもキチンとした身なりをしている。

「ミシンかけや、スカートやズボンの裾上げも得意です。フランス刺繍も出来ます」となかなか、たのもしいではないか・・・。

親がかりの甘ったれた女より、ずっと家事能力に長けているし、是非、イクメンにもトライしたいと、やる気満々なのだ。ところが、お相手の女性が、なかなか見つからない。殆どが男性依存型で、自分達は給料を海外旅行や衣類に注ぎ込みながらも「結婚生活は男性の収入で」と言われるらしい。

「とても僕をお婿にもらってくれそうにない」と彼は嘆く。なかには男のくせに、だらしがないと非難する人もいるそうな。

いつ彼の願いが叶うのかは、わからないけれど、退職祝いに花束をもらって、ポッと頬を染めている男性の姿も、おつなものだと思う。

彼が栄えある結婚退職の男性第一号になれるように、私は陰ながら応援している。