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短足

短足

「あなたって本当に歩くのが速いわね」と知り合いにいつも、言われている。

姿を見かけたので声をかけようと思ったら、ビックリするような速さでスタスタ去っていくと、よく言われる。

私は高校生になるまで普通の速度で、いや、むしろ比較的ノンビリ歩いていたと思う。

速く歩く習慣がついたのは、高校に入って友達と「短足クラブ」を作ってからである。

私の通っていた高校は、お嬢様学校で、それはそれは、モデルみたいなスタイルの良い八頭身の、足がシュッと長く、スリムな美女が異常に多かった。

学校が終わり、遊びに行く時は、当時、全盛期だったジーンズ。耐久性に優れ、しかも安価でオサレな、この衣類をクラスメートも私も愛用していた。

ところが皆の下半身が同じ衣類で、それもズボンで統一されると自分の欠点が丸出しになることが判明してしまった。

その欠点とは、もちろん短足である。ジーンズを買うたびに、もう一枚、ショートパンツが出来るくらい丈を詰めなければならなかった。こんな私と悩みを同じくする友達3人と、お互い励まし合ってこの難局を乗り越えようと「短足クラブ」を結成した。

まず第一の問題は、いかにして足を長く見せるかである。ベルボトムのジーンズに厚底のポックリみたいな靴を履いてごまかすという手もあったが、根っからオッチョコチョイの私は転倒するのが目に見えているので無理。そして勉強もせずに真剣に議論して出した結論・・・「他人に短足と悟られないように速く歩く」だった。

これが私が、そそくさと速く歩くようになったきっかけである。

でも今から思えば、当時の短足は太ももが異常に発達して太かったので、そこが原因で短足に見られたのかもしれない。

最近の若者は皆、足が長くなったのには驚いてしまう。

「足が短い方が下に落とした物が取りやすいんだよ」と抵抗しても、むなしいばかり・・・。これからは続々とスタイルの良い日本人が生まれて来るのは明らかである。きっと私は一生、早く歩くハメになるに違いない。