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ヤモリ

ヤモリ

今のマンションに引っ越して1年半が過ぎた。駅から遠いものの、山が近くにあるので緑は多い。先日、何気なく窓を見ると、ガラスに妙な影がうつっている。

一体、何者かと窓を開けて確認すると、そこには、何十年も見たことが無かったヤモリがへばりついていたのだ。「そういえば世の中には、こういう生き物もいた」・・・私は懐かしい友達に再会したような気分になった。

一番、最初にヤモリを見たのは小学校1年生の時だった。叔母の家のトイレに入ってスリッパに足を突っ込んだ途端、何だか、ブニャっとしたものに触った。場所が場所だけに恐る恐るスリッパから足を引き抜くと、中から、よたよたとトカゲ風の生き物が、はい出して来たのである。

たまげた私は和式便所の中で、トカゲが出たと大騒ぎした。

すぐに叔母がすっとんで来た。しかし、私の事なんか、そっちのけで「太郎ちゃんは大丈夫か」と言うのだ。太郎ちゃんって何だと聞いたら、そのトカゲ風の生き物の名前だった。そこで、これはヤモリで家を守ってくれるので大切にしなければいけないと教えられた。

しかし、いくらそう言われても、下半身が無防備になる狭い場所でヤモリと二人っきりになるには、何となく抵抗があり、横目でタイルに、へばりついている太郎ちゃんの様子を見ながら、用を足していた覚えがある。

あれから一度もヤモリとは、お目にかかってないので、ヤモリが元気で生きていたのを知ってとても嬉しい。でも、でも、一匹ならともかく、4,5匹窓ガラスにへばりついていたり、たまにナメクジも参加しているのを見ると、ギョッとすることもある。「これも緑の多いおかげ。これだけヤモリが守ってくれているんだから家は安泰だ」と背中をゾクゾクさせながら、次の引っ越し先を考えている。