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前世

前世

昨日、大阪に行く電車に乗っていたら隣の座席に座った若い女性の二人連れのうちの一人が「前世を見てもらった」っと興奮気味に喋り始めた。ふんふんと聞くともなしに聞いていると、彼女は古代エジプトの、お姫様だったそうで「たくさんの人に傅かれて、幸せな日々を送っていたのだけれど、許されない恋を父親にとがめられて、引き離されて、泣きながら、そのまま若くして亡くなったんだって」とうっとりしている。きっと彼女の頭の中には金銀宝石を身にまとった、クレオパトラみたいな姿が浮かんでいるんだろう。

が、当のご本人は、悲嘆にくれてそのまま亡くなるような繊細なタイプじゃなく、何事があっても体だけは大丈夫と思われるガッチリした体型の女性だった。

「うらやましーい!!私も見てもらいたーい」連れの女性も興味津々だ。

もと、古代エジプトの、お姫様によると、雑貨店かアクセサリー店のような所で1万円以上買うと、前世がわかる店長がサービスで見てくれるのだと言う。

お姫様は友達に教えてもらって、その店に行ったようだ。

「わぁ、今度、連れて行ってね」

「うん、どういう前世なんだろうね~」

彼女達は手を握らんばかりにして盛り上がっているのだけれど、話を漏れ聞いた私は「あんたたち、うまーく、やられちゃってんじゃないの」と疑いの目を向けざるをえなかった。

私自身は前世や霊が本当にあるのかないのか?わからないが不思議な出来事を体験した経験が何度かあるので全く否定はしない。でも全てを認めようとは思わない。ただ、あった方が話のネタとして面白いなと感じる程度だ。

理論づけが出来ないものは全て否定する人もいる。

例えば霊は見なくても、虫の知らせとか、勘が働いたりする経験をする人は多い。世の中には理屈で説明できないものがあった方が、楽しいじゃないかと言った程度で興味があるのだ。

でも幾ら以上、買えば前世を見るなんて、それって、ただの客寄せなのではないだろうか?もしかしたら本当に前世がわかるのかもしれないが、古代エジプトの御姫様の例にしても、いかにも話が、取って付けたようで「嘘なら嘘で、もうちょっとマシなストーリーを考えろよ」と言いたくなるし、店の商品が売れて、客が喜んでいれば別に、うるさいおばちゃんが口を挟むことはないのだが、もとエジプトのお姫様に対しても「あんたも、もう少し冷静に考えなさいよ」とたしなめたくなってしまう。

前世の話を聞いた友達は、見てもらいたさに1万円以上、商品を買うだろう。物が欲しくて買うのか、見てもらいたさに買うのかわからない。

そういうしくみが、おかしいと感じないところが問題なのだ。

店の方は客が喜ぶように仕立て上げて、口コミを狙う。私の知り合いで年輩の占い師に前世はカエルと言われた人がいた。

つづく