先日、近所のカフェでお茶を飲んでいたら、隣に大柄な中年の女性が座った。
重そうな金の輪っかをあっちこっちにつけて派手なプリントのスーツを着た、いかにも金満家といった風体の人である。
グローブのような手に、不必要なくらいに大きな石のついた指輪を3個もはめ、どことなく猪を思い出させる人だった。
私は彼女の濃厚な動物の匂いの香水に辟易しながら、興味津々で彼女を観察していた。
しばらくすると、友達らしい年配の女性があらわれた。
きちんとした身なりではあるが疲れた雰囲気が漂う、薄幸そうな人である。
「持ってきたわよ」金満家はケリーバッグの中をごそごそやって、小さなチューブを取り出した。
「効くのよ。見て、この間、会った時よりも小じわがなくなったでしょ?」
彼女は薄幸婦人に向かって、ただでさえ張っている胸を張って、自分の目尻を指さした。
顔をのぞきこんだとたん、薄幸婦人の目は輝き、うっとりとした目になった。
金満家は「ふふん」と得意そうに笑い、「これはアメリカでしか買えないの。先週、買ってきたら、あなたにもあげたくて」と、もったいをつけてチューブを渡した。
「高いんでしょう、悪いわね・・・・」薄幸婦人は手の上にそれを乗せて、何度も「悪いわねぇ」を繰り返している。
「いいわよぉ、長い付き合いなんだから」金満家はガッガッガと豪快に笑った。
そして自分が今、使っている化粧品は十何万のクリームだとか週に一度はエステに通ってるとか自慢しまくっているのを聞いた私は、飲んでいたコーヒーを吹きそうになった。
ケッ!!十何万のクリーム使って、その顔かよ~( 一一)
つづく