最近の若者は、海外旅行には興味を示さないそうだけれど、私の周囲の中高年は、せっせと海外に出掛けている。
知り合いの50代後半の女性も娘さんと一緒に2週間、また、40代の知人男性も、70代のご両親を連れて海外に行った。
しかし帰ってきた彼らから聞いたのは旅行先での災難だった。
その女性は、夕方、観光地にある陸橋を渡っていた。
大学生の娘さんは後方から自分のペースで歩いてくる。
すると下の広場でイベントが始まるらしく、周囲の人々がわっと集まってきた。
彼女が何事かと欄干から下を見ていたら、若い外国人男性がやってきて、見にくいだろうから自分が抱きかかえて見せて上げると、英語で話しかけて来た。
若い女性ならば「これは恋のはじまりかしら?」と胸がときめくだろうが、50代後半ともなると旅行先の恋よりも身の安全である。
彼女が断りの英語を思い出そうとしていると、あっと言う間に抱きかかえられてしまった。
びっくりした彼女が手足をバタバタさせて抵抗すると、やっと下におろしてくれ、彼はにっこりと笑って去って行った。
日本では絶対に起こらない状況に呆然としていると、娘さんがやってきて彼女のバッグを指さし、「開いている」と言う。
肩から斜め掛けをしていた小さなバッグのファスナーが全開し、見事に財布が抜き取られていたのである。
つづく