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猫それぞれ

猫それぞれ

私の周りには猫を飼っている人が多い。

その中のKさんが飼っていた猫が先日、13歳で亡くなってしまった。

体重が20キロ近くあったものの、真っ白な毛並で可愛い顔だちをしていて、おっとりとした性格の猫だった。外国人の体型のように体が太いのだが顔は小さく、手足が細い。ケージに入れて獣医さんの所に連れて行くと、居合わせた人は顔だけを見て「まぁ、かわいいわねぇ」と言う。しかしケージから出たウエスト65センチの堂々とした姿を見ると、みな、「うわあ」と驚き、「これは何という生き物ですか」と真面目な顔で聞かれたこともあったというくらいの猫だったのである。

猫の具合が悪くなってからの、Kさんの心労にはただならぬものがあった。

餌を食べなくなったので、体調の変化に気がついた。それまで彼女は、その猫のことを「どうしてあんなに、意地汚いのかしら。キャットフードを腹いっぱい食べたっていうのに、冷蔵庫のドアのパタンという音がすると、ささーっと走ってきて、じーっと私の顔を見てるのよ。全く嫌になるわ」

とこぼしていた。とにかく食べることが大好きで、なんだか一日中、餌入れの前に座っているような気がすると言っていたのである。

私は昔、うちで飼っていたトラと友達のSさんの猫の話をした。

トラには一番最初に餌をやっていたのだが、食卓の上に載っているおかずと、自分の前にあるおかずを必ず見比べて、もらってない物があると、じーっと食卓を見ていた。「どうしたの、食べなさい」と言っても絶対に食べない。猫の視線の先にそのおかずがあるのを悟った母親が、「ほら、あんたはニンニクが入った野菜炒めなんか食べないでしょ」と目の前に持って行って、これは食べられないと猫が判断すると、やっと餌を食べ始める。酢の物や辛し和えの時は、いつもこうだった。どんなに「あんたはこれは食べられないよ」と口で言っても、目の前に持っていかないと絶対に納得しない猫だった。

つづく