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猫に小判

猫に小判

先日、衣替えをしている時に衣装ケースの奥の方に、いや~な思い出満載の服が出て来た。

私は衝動買いは、滅多にしない性格だけれど、一度だけ、バカげたことで、お金をドブに捨てた事がある。

何のパーティだったか、忘れてしまったけれど、友人を会場に車で送って行った。その時の私の恰好は、ゴムぞうりに自分でハサミで裾を切ったジーンズに男物の黒いセーターを着ていた。

会場の玄関で友達を降ろすと、私の知り合いの某化粧品メーカーの偉いさんが立っていて、手を引っ張って、中に入れとしつこく言う。

「こんな恰好じゃぁ」と思い、8時くらいだったろうか、河原町通りを走って開いている店に飛び込んだ。

一番先にマネキンの着ているスーツを脱がせ、その下の黒いセーターを出させ、試着室で汚いものを次々と足で踏んで着替えた。「ねぇ、黒いストッキングある?」「黒い靴ある?」

全部あったので偉い店だと思った。

お金を持っていなかったのでカードを出した。

えっ?えっ?・・・三万九千円は安いが三十九万円?ってことがあるか?

私は、じぃーーーっと数字を見た。

私はブランドというものを知らなかった。開いていた店はマックスマーラというブランドの店だったのだ。

ちっとも似合わなかったが友人の間で「花ちゃんのマックスマーラ」という笑い話はできた。あれから一度も39万円を着ていない。

当時は、まだ結婚していたので私の呼び名は「花ちゃん」だった。

今年も、マックスマーラを見て、「あ~あ」とため息まじりに、奥にしまい込んだ。

これが本当の「猫に小判」