レストランで隣に居合わせた、体格のいい、おばさんが「太った」を連発しているので横目で点検したところ、うなじがモリモリと盛り上がっているのを見て、私はびっくりしてしまった。
「二重アゴ」はあるが「二重うなじ」というのは聞いたことがない。
犬のセントバーナードのうなじと同じような肉のあまり具合だった。
それは親指と人差し指でつまんだら、気持ちよさそうに、ぷよぷよしていた。
(人間は、めいっぱい太ると、最後はあんなとこまで肉がつくのか)私は感心して「二重うなじ」を眺めていた。
「おかしいわねぇ」
おばさん達は皆で首をかしげていた。
私は「ここ、ここ」と手に持ったナイフで、うなじを突っつきたい気持ちを、ぐっとこらえていた。
うなじは女の色気の基本といわれているのに、あんなところに肉が付いてしまったら本当に悲しい。
「いちばん、恐ろしいことは知らないうちに背後から忍び寄ってくる」
私と娘は「ちょっと変だと思ったら、うなじチェックを忘れずに」とうなずきあったのである。