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女脳、男脳

女脳、男脳

私が子供の頃から「お誕生会」というものが流行り始めたと思われる。

住宅事情やら経済事情やらで、招かれるのは一人や二人の少人数だった。

招待された時は、母が何か手土産を必ず持たせてくれた。でも帰ってきて母が「何をご馳走になったの?」っと聞くものの、何も覚えていなかった。

もう少し大きくなると誕生日関係なく、友達の家で、ごはんを食べさせてもらうことも多くなった。すると又、母は「何をご馳走になったの?」と目を光らせて聞くのだ。その熱心さは、私の通信簿を見る時より余程、強かったような記憶がある。

「こーーんな大きな牛肉が入っているカレーで何だか、食べられないような葉っぱが入っていた」「フーーーン」と母はしばらく考えている。

やがて自分の子供が誕生会に呼ばれるようになった。私は帰ってきた子供に聞く。

「ねぇねぇ、ご馳走は何だったの?」・・「いろいろ」

男の子って、どうして、具体性に欠けるのだろう?その息子の父親にも私は、よく聞いたものだ。「えー、何だったかなぁ、いろいろあったよ」

「いろいろって何よ、肉とか魚とか」「いろいろ沢山あったよ、あそこの奥さん、料理うまいぜ」「ふーーん」何を食べたか覚えてなくても美味しいって事はわかるんだ。

私は大人になると母に自分から報告していた。

「何々さんのごはんは凄い!鮭まるのまま全部使って、すごく色々なの、初めはね、鮭のマリネで、照り焼きもあったね、イクラ丼にお汁は、かす汁で、頭の骨の酢の物もあったよ」

「そう、昔からあの家、食道楽だったもんねぇ」

でも私は聞かれたことがない。息子に「母さん、今日、何ご馳走になってきたの」とか同居人の男に「○○さんちで何食べてきたの?」とか。

女のひとを招く時の方が余程気をつかうし、張り切り方も違う。独身の男なんか、その辺のものを量だけドサッとすませて平気なのだ。でも奥さんの居る人、きっと家で聞かれているはずなのだ。「ねぇ、何ご馳走になったの?「いろいろ、たいしたもんじゃなかったよ」とかね。

ちなみに、お盆休みに海に行って帰ってきたら、息子が「美味しいもん、食べてきたんやろーーー」「んや、いろいろ」

私も段々と男脳に近づいてきてるみたい。