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女王さま

女王さま

知り合いの女性が祇園にあるSMの店に行った時の話を。

私は、そういう店が存在することは知っているし、そういう趣味のある人がいるのも知っている。人の趣味は色々だし、宗教と同様で強要されたら嫌だけれど、個人個人で楽しむのは、お好きにどうぞと言う感覚だ。

SMの店というと地下の秘密クラブのようなイメージだけれど彼女が行った店の話を聞くと、随分、オープンな雰囲気のようだった。そうでなければ、男性4人と彼女一人で、食事をした後、「じゃ、行きましょうか」という流れにはならない。好奇心旺盛の彼女は、これも貴重な体験と皆の後に、付いて行ったそう。

マニア向きの店であれば、同じ趣味の人々が沢山、集まっているのでは?っと想像していたが、時間が早かったのか、それとも、いつもこのような入りなのか、店内には彼女達しか客はいなかった。50過ぎと思われるマスターが出てきて唐突に「はい!Sの人」と聞いた。彼女が一体、何と言っていいやらとキョロキョロしていると男性達は誰も手を挙げない。

「それじゃ、Mの人」と言われると男性全員が「はぁい」と手を挙げた。

それを見た彼女はぎょっとして「え?この人達、全員M?]と驚いたが詳しく聞くのも変なので黙っていた。するとマスターは、」Mだとカミングアウトした男性達の前に緑色のコースターを置いたそう。

「あなたは?」マスターは彼女に聞いた。

「え、あの、いえ、私はSでもMでもない、ノーマルだと思うんですけど・・・」しどろもどろになって答えると、彼は鼻で笑った。

「この世の中にはノーマルなんていないんですよ。必ずSかMに分けられるんです。そうじゃない貴女は変態!!!!」

きっぱりそう言い切られ、彼女の目の前には変態の印である赤いコースターが置かれた。

「あたしって変態だったの」彼女は驚きつつ、目の前のコースターを眺めていた。皆、ドリンクをオーダーし、普通に雑談しているとマスターがやってきて、「すみません、実は女王様に急用が出来て今日は来られないんです。でもせっかく来てくれたのだから私が何とかしますから」と謝った。

彼女は「女王様の急用って何だろうか・」と考えた。もしかしたら子持ちで子供の具合が悪くなったのかもしれない。

するとマスターが鞭を持ってきて突然、男性たちを「えい!えい!」っと叩き始めた。誰も知らない人が見たら、クラブのマスターがキレて客にたいして暴力をふるっているとしか見えないのだけれど、この店では、それが喜ばれるのだった。

つづく