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洋式トイレ

洋式トイレ

私は小学生の時に父親の仕事の都合で何度も引っ越しをした。

父親が引っ越し魔だったわけではなく、公務員だったので一年に一度、必ず3月には官舎に引っ越すことになっていた。

官舎というのは大体、古い建物が多かったのだが、小4の時、何故かモダンな広い大きな家に引っ越して「わーーい」とはしゃぎながら家の中を探検していて、トイレのドアを開けたとたんギョッとした。そこの家は洋式便器だったからである。今まで引っ越してきた家は水洗ではあったが和式であった。私は10歳にして初めて洋式便器に遭遇したのである。

「これは、いかん」不安が渦になって私を襲った。

外国人が洋式便器で用が足せることを、私はつねづね不思議に思っていた。

和式でする、しゃがみスタイルは、ふだん、めったにする恰好ではないので、条件反射で肛門が反応する。

しかし洋式は単に椅子に座っている恰好だ。

それに慣れてしまったら、椅子に座っている時はいつでも、学校の授業中でも食事中でも、ところかまわず脱糞してしまうのではないか、という恐怖が私にはあったのだ。

つづく