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猫それぞれ5

猫それぞれ5

Aさんの飼い猫は10歳のシャム猫で、普段は大人しく賢いのだが、車に乗った途端に人格ならぬ猫格が豹変する。とんでもないオタケビを発し、運転しているAさんは、後部座席のケージの中にいる猫に向かって「うるさい!!」と一喝し、私に「かまわないでね、甘えているだけなんだから」という。

猫には猫の分があるので、それをちゃんと納得させなければいけないという。

べったり甘えさせるのは、よくない。厳しくするべきところは、厳しくしなきゃいけないと言うのであった。

その後、Aさんは喘息になり猫の毛もよくないということになって、Mさんに飼ってもらうことになった。ところがMさんに飼われてからというもの、あんなにしゃきっとしていた猫が、でろでろになったとAさんはこぼしていた。

食べ物の好き嫌いを言うようになり、気にいったものが出て来るまで、ずーっと鳴いている。

「私が飼って居た時は、やったものは何でも食べたし、もっときりっとしてたのに」Aさんは嘆く。猫用のおやつまで買って可愛がってるMさんに「あなたが甘やかすからよ」と怒るのである。

「あーー、あんたは堕落したわねぇ」猫に向かっていうAさんの言葉を聞いた私は「きっと、何をやってもすぐ怒られるから、君は怖くて体が硬直してたんだよね」と言ってやった。

私達3人が明け方まで話をしていると猫はずっとそばにいる。

「あんた、先に寝ればいいじゃないの」Mさんが笑いながら言うので猫の方を見ると目の玉が上にいき舟までこいでいるというのに、きちんと、お座りをしたまま、その場を離れようとしない。とにかく人が好きなのだ。

つづく