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素敵な爺さん

素敵な爺さん

30代の頃、同年輩の男性と付き合うよりは、爺さんと茶を飲んで話をしているほうが、よっぽど楽しそうと思っていた。男の見栄やら、プライドやらと付き合わなくちゃならないのが、とても面倒臭く「やりたい事は、みな、やった」というような爺さんの方が一緒にいて楽なのではないかと考えていた。

思い起こせば、街中で素敵な着流しの爺さんを見つけて、20メートル位だけれど、くっついて行った事もあったっけ・・・。

今、私が住んでいるのは閑静な住宅街なのだけれど、一軒、場違いなラブホがある。

今年の正月、町内を散歩していると、そのラブホから出て来た爺さんと出くわしてしまった。

連れの若い女性とは一切、話をせず、そのまま歩いて行く。二人の間隔は開いていき、二人とも何食わぬ顔をして駅に向かって行った。

「正月から何やってんだ」私はむっとしたが、爺さんにすれば、正月だからやっちゃったのかもしれない。グレーのスーツを着たとても身なりの整った、恰幅のいい爺さんで年齢は70代半ばくらい。又、相手の女性は明らかに素人には見えなかった。身長は150㎝そこそこの女性で10㎝以上のハイヒールを履き、太もも丸出しのミニスカートに、スカートとは全く色の合わない網タイツを穿いていた。体重は30キロ台に見える細さで艶が全くないゴワゴワした金髪に染めた髪は、お尻が隠れるくらい長かった。

私はすまして歩いて行く彼を見て、一気にテンションが下がり、気分が悪くなったのを覚えている。

かつては目を引く爺さんが居たのに最近は収穫ぜろ。

私も婆さんと呼ばれる年齢に近くなり、爺さんとの年齢差が少なくなればなるほど、爺さんの興味は薄らいできている。

若い頃は錯覚をしていたのか、歳をとって人となりを見抜けるようになったからか、現実問題として、恰好いい爺さんの比率が低くなったのかはわからない。

誰かが、美人の女性はきれいな、お婆さんになれるけれど、そうでない女性は可愛いおばあさんを目指せばいい、それは簡単なことだと言っていた。

そりゃあ、人の悪口も言わず、優しい婆さんだったら、多少、おへちゃでも皆に好かれるだろう。

昔は町内に必ず底意地の悪いばあさん、じいさんが居た。ばばあと言えば、因業ばばあ、じじいと言えばクソじじいだった。最近は全く姿を見かけないところを見ると高齢で外出できなくなったのかもしれない。

でも最近くそじじいが、勢力を増して来ているのを発見した。

長くなるので又、明日。