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素敵な爺さんは何処に?

素敵な爺さんは何処に?

素敵なお爺さんが居なくなったと昨日、書いたけれど、先週、平日の午後に電車に乗っていたら優先席の若い母親の膝の上にいた幼児が泣きだした。

母親がなだめているものの、鳴き声は段々大きくなっていき、最後は悲鳴まじりになっていた。向かい側の座席に座っていた高齢の女性が立ち上がり、「あらあら、どうしたの」と手を出したものの、幼児は手を、ぶんぶん振り回して抱っこを拒絶する。

すると母親と同じシートの隅に座っていた、70代半ばの爺さんが、大声で

「ちょっと、あんた、電車降りなさいよ。うるさくてしょうがないよ」と母親に向かって怒鳴ったのである。母親は恐縮して何度も頭を下げている。私は少し離れた所で、それを見ながら「うるさいんだったら、お前が降りろ!」と腹が立ってきた。

車内はガラガラで前後の車両にも空席は沢山ある。大きなバッグを持って、ベビーカーを押した母親が移動するより、手ぶらの彼が移動するほうが、はるかに楽なのだ。

爺さんが怒鳴ったものだから火に油を注ぐ結果になり、幼児の鳴き声は最大限に大きくなって車内は大惨事になってしまった。

最初は私を含め、鳴き声がうるさいなぁと思っていた乗客も、爺さんが怒鳴ったので、自分達がうるさいと感じたことは、ちょっと棚に上げ、「それはないんじゃないの」という雰囲気になり、爺さんをにらみつけていた。

母親が幼児をあやしながら、荷物をまとめて移動しようとしているうちに、段々、車内が混雑してきて、空席が埋まってしまった。子供は泣き疲れたのか声が少し小さくなってきた。「そのまま座っていればいいわよ」周囲にいた、叔母さん達が声をかけると、母親は又、丁寧に頭を下げて腰をおろした。

怒鳴った爺さんはと見ると、嫌みったらしく人差し指を左耳の穴につっこみ、そのまま真横を向いて知らんぷりをしていた。爺さんも子供や孫が成長する姿を見ているだろうに、歳をとって、ああいう人間になるとは情けないなぁと思った。

私が素敵と感じる爺さん達はすでに、死に絶えたのだろうか?

それとも私の知らない場所に棲息しているのだろうか?

まだまだつづく~爺さんシリーズ