学生時代、一学年上にOという名前のとてつもなくハンサムな先輩がいた。
背が高くて勉強がよく出来て、スポーツも万能。
彼が歩くと、まるでハーメルンの笛吹き男のあとを追うねずみのように、女の子がぞろぞろくっついていた。
彼女たちの目は一様にうっとりしていて他の男の子たちには目をくれようともしなかった。
なかには自分はまるで牝牛のような体格のくせに「あんたたちとOさんが同じ男だなんて、信じられないわ」などという暴言を吐く子もいた。
そういっちゃ他の男の子に悪いけど、確かにそう言いたくなるほど、彼の顔面は超ド級のすごさだったのである。
色黒で大砲の玉みたいな顔だちの女の先輩は、彼の姿を見ると、甘えた声で「Oくーん、ねぇ、まってぇ」と言いながら、ぶっとい腰をくねくねさせて彼のあとを追いかけて行った。
私達は彼女がその声を発したとたんに、Oさんの歩く速度が急に速まるのを知っていたので美少年のあとを腰をくねらせながら追いかける大砲の玉の姿を、陰で笑いながら見ていたものだ。
Oさんが卒業する時は、殆どの女の子が泣いた。
彼は山のようなお別れのプレゼントをもらって、他の男の子の反感をかっていた。
大砲の玉も目を真っ赤にしながらOさんの周りをぐるぐるまわっていた。
彼が卒業してしまうと、私達の登校する第一目的がなくなってしまい、胸にポッカリと穴があいたようだった。
つづく