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一人旅の達人

一人旅の達人

今日、久しぶりに来店された彼女。来られると必ず、開口一番、「どこか旅行に行かれましたか?」っと聞かれる。

出無精の私はいつも「いいえ」という返事なのだけれど、彼女は実にこまめに海外へ足を伸ばしている。ただの買い物旅行では決してない。

この方は人が余り行かない所に異常に興味を示す癖がある。もちろんツアーなんてもってのほか。

日本に帰る日だけ決めておいて東南アジアの奥地とか、中南米に一人で、ちょっと近くに行ってくるみたいに、ひょこひょこ行ってしまうのだ。

先日も、中南米に行った時に、麻薬の運び人と間違われて、隣国にスムーズに出国出来ず、足止めされてしまったという話には驚いた。何日かその国に留まっていれば不審人物にされなかったのに、通過するだけだったので疑われたらしい。

言葉が全くわからない彼女が「私は無実だ」とジェスチャーを一生懸命しても担当官は「遠い日本からわざわざやってきたのに、我が国に一日も滞在しないのはおかしい」と彼女をハナから疑ってかかったのだそう。

彼女は特別に人相が悪いわけじゃなく、むしろ優しい顔立ちなのに「運び人」と間違えられたということで、あちらの国では如何に麻薬が大問題になっているのかが、わかった。

すったもんだの挙句、半日後、彼女はようやく解放されたが、それも担当官がシブシブだったらしい。「取り逃がした」という悔しさに溢れた眼差しを背中にビシバシ感じながら、彼女は「だって私は無実だもん」っと言いながら出国したそうな。

「無事であったから良かったものの、一歩間違えると大事でしたよ」っと私が言うと「へたをしたら、終身禁固刑だったかもね~」と言って豪快に笑っていた。

帰り際に、いつも持ち歩いている世界地図を見乍ら、「次はアフリカの奥地に行ってみようと思ってるの」・・・・「どうぞ、どこへでも、お好きな所へ行って下さい。」

どうひっくり返っても、そんな旅など出来ない私には、そう答えるしか無かった。