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ゆる男4

ゆる男4

ゆる男の体質は子供の時からで、ミルクを飲んだりすると、てきめんだったという。

その日、私達は仕事の取材のため、外国の街中を車で走っていた。ところがある場所を過ぎた頃から車の渋滞がひどくなり、予定していた3倍以上の時間がすでにかかっていた。

朝、彼の体調の話を聞いたので、私はとても気にはなったが、話をふって意識されると余計まずいと思い全く関係ない話をしていた。窓の外にはウエディング関係の店が並んでいた。ショーウィンドーには新郎、新婦のマネキンが飾ってあり、いかにも幸せいっぱいという感じである。

「ああいうふうに、あんたもそのうち結婚するんだねぇ」Aさんが言った。

「さあ、いつになるかわからないけどね」彼はぼそっといった。彼女はにたっと笑って「結婚式の時、括約筋がゆるんだら、どうすんのさ」と彼の耳元でささやいた。

「げっ」かれは絶句した。

「一生に一度の披露宴の席で緊張のあまり、突然、催すのよ。まさか、新郎が中座するわけにもいかないから、あんたはじっと金屏風の前で耐えるしかない。でも結婚式の朝、お母さんに「ミルクでも飲んで元気を出しなさい」なんて言われて、ついつい飲んじゃったわけよ。それがじわじわと影響して、とんでもない事態になるのよね」

「も、もうやめろよ」彼は真顔になった。

「そしてさ、もう、耐えられなくなっちゃうわけ」

「・・・・・」

「で、さいごは爆発して、一同、大騒ぎっていうことになるんじゃないの」

そう言って彼女は笑った。でも彼は笑わなかった。もしやと思って私が心配になったのにもかかわらず、Aさんは彼の耳元で「ミルクを飲むと一発で出ちゃうんでしょ」と言った。その時彼は、「実は今朝、ミルクを飲んできたんだ」と言った。その時彼女の顔色が変わった。

「えっ」

つづく