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困った爺さん

困った爺さん

先日、銀行のATMに行くと珍しく混雑していた。

行内にあるATMには10数人が並び、最後尾は出入り口近くまで人が行列していた。私の前には若い母親が右手を目一杯伸ばして、大型ベビーカーを押し、左手でずーーっと携帯をいじくっている。2メートル分の場所を占領しているのに、全く気にする様子もない。反対側の行内に入って並ぶと、出入り口をふさぐ形になるので、すでに自動ドアは開きっぱなしの状態だったし、寒い日でもなかったので、私は彼女の後ろに並んだ。少しづつ前が動いていたので行列は解消するだろうと思ったからだ。

2~3分ほどしたら、突然、「ちょっと、あんた」という怒鳴り声が響いた。

いったい何事かと振り向いたら、70代後半くらいの爺さんが、私を見ている。

「はっ?」ビックリしていると彼は「何でこんな所に立ってるんや!こっちに曲がれ!こっちに!」っと手で指図する。私に行内に入れというのだ。

「そこに並ぶと、出入り口を塞いで奥のカウンターに行く人に迷惑ですよ」

彼は聞く耳を持たず「ええから、こっちに曲がれって言ってるやろ!」と怒鳴る。私は、見ず知らずの爺さんに怒られる覚えは無いので無視していると「だからなぁ、こっち側にくればいいっちゅうこっちゃ」と又、怒鳴る。

その途端、幸いにも列が動き、私はATMの至近距離まで移動出来たので爺さんの言う通りにしなくて済んだ。彼はブツブツ文句を言いながら、隣のATMで操作をしていたが「ちょっとー!ちょっとー!」っと大声で職員を呼び出した。

慌てて職員がやってきて何やらやっていたが「えーー、なんでやーー」「ちょっとさぁーーうまいことならへんのかいな」などと大声で叫んでいた。基本的に物凄く騒々しい人なのだった。あれでは奥さんや、周りの人は、さぞや大変なのだろうと思う。

どうしてこういうジジイは突然、見ず知らずの他人に対して怒鳴るのか?

だいたい、怒鳴るというのは最終手段であり、そうであっても見苦しい行為だ。それを他人に対してするのは基本的な対人関係のマナーに欠けているし、それで自分のいうことを聞かせようとする神経がわからない。世の中の人はジジイの妻でも息子でも娘でも無いのである。それなのに家の中で彼らにやっているのであろう態度を他人にも同じようにするのは、どうしても理解出来ない。

見知らぬオバちゃん達が知人や身内にするように「アメ食べる?」と言ったりしているのを見ると微笑ましいし、私も何度も嬉しい思いをしたけれど、男性の場合はあり得ない。

店や駅などで相手に落ち度があった時、彼らが誠意を見せて謝っているのに、過剰な謝罪を求めてるジジイ、ジジイ予備軍のオヤジを、よく見かける。

あれは段々、エスカレートしていくのではないだろうか?

過剰な謝罪を求めて自分が偉いと思わせたいのだろうか?

もはや、素敵な爺さんは絶滅危惧種なんだろうか?