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眉カット

眉カット

若い頃から化粧には全く興味がなかった私は口紅さえ塗るのが嫌いだった。

友人は化粧のポイントは目だからと言い、アイラインもマスカラも、ぽってり塗りまくっていた。でも私の目はデカいのでラインを引くと、ここに目あり!!っと変に誇張してしまうし、マスカラを塗れば、ヒジキまつ毛になってしまう。

どんなに手間暇、お金をかけても私の目の化粧は無駄だと諦めて、それから何もしなくなった。

それから何十年もたった30代半ば、ある時鏡を見ていて、仕上げに口紅を塗ってもどうも顔がしまらない。その時初めて、口紅よりも眉毛が大切になったと気がついた。何もしない野放し眉毛は、もう限界にきていたのである。すぐに眉カットばさみと眉墨を買ってきて、眉の手入れを始めたものの、これには職人技ともいうべき技術が必要であった。

鏡の前にへばりつき、ほんの1,2㎜切っては鏡から離れてチェックし、また、鏡の前にへばりつく。それを何度も繰り返し、美人眉が出来上がったかといえば、もうちょっとカットしてしまうと牛若丸のおでこにある、ぼっちになる可能性大の眉毛しか残らなかった。どの程度の濃さで眉を描いていいかもわからず、どんどん描いていくうちに濃くなっていき、しまいには博多仁和加のお面をつけたみたいになったこともあった。

最近は老眼になって細かい部分が、とても見えにくくなり、前よりももっと眉カットに苦労している。目をこらし、息を止めてカットして両眉のバランスを見る。ここで右が短くなった!あ、今度は左が~っと切っていくと、牛若丸の、ぼっちになるので、気をつけなくてはならず、ものすごーく時間がかかる。

目をしょぼつかせながら、やっとの思いでカットした眉を見て「どこかで見ような」と首をかしげた。「ヤンキー」のお兄ちゃんたちがしていた一直線の眉と同じ形になっている。あれは一本気な男の気合を示していたわけじゃなく、下手くそが眉カットをしていくと、おのずとあの形になってしまうのだ。

眉カットは人にするのは簡単なのに自分でするのは本当に難しい。

どうやったら自分の顔に合った女性らしい眉にできるのか、何十年も眉カットの腕が上がらない私には想像もつかないのである。